人工知能の翻訳技術の発達で、英語学習は不要になるか|翻訳AIに超えられない3つの壁

インターネットの次に来るものとして、AIだVRだのと叫ばれている昨今。個人的には、人口知能のゆく末について、翻訳機能と語学学習という分野に非常に興味があります。これは私自身が英語学習者であり、本業でも語学学習に携わっていることに起因しています。ので、ここでは、「人工知能の翻訳技術の発達で、英語学習は不要になるか」ということについて考えてみました。参考文献は以下。

『話すための英語力』鳥飼玖美子

『人工知能解体新書』神崎洋治

語学学習の危機

昨今の翻訳技術の発達は凄まじく、最近では、Googleの「リアルタイム翻訳カメラ」や、音声通訳デバイスの「イリー」の性能が高いことで話題になりました。FacebookやInstagramなどのSNSの投稿でも、「翻訳する」というボタンがついていていて、クリックするとユーザーの言語に翻訳されます。翻訳の質自体は、まだそのまま使えるレベルではありませんが、機械学習によってこれから質はどんどん改善していくんだと思います。

友人がInstagramで「Boarding now!」と飛行機の中の写真をアップしていて、何気なく「翻訳する」をクリックした時、「搭乗なう!」と翻訳されたのには驚きました。機械的な翻訳であれば「今搭乗」と訳されそうなものですが、SNSにふさわしい形で訳されているということです(たまたま?)。

こういった翻訳技術の発達を目の当たりにした時、英語学習者の方で多少なりとも危機感を覚えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。かくいう私もその一人です。自分自身は、留学経験もなくドメスティックな人生を歩んできたので、英語を操るということに強い憧れをもつようになりました。なので、英語学習を始め、海外の大学院(オンライン)に入学しビジネスを英語で勉強し、仕事も英語を使う環境のある職場に移りました。

しかし、多大な時間とお金をかけて勉強している英語ですが、ある程度ビジネスでも使えるようになったとしても、翻訳機能の発達で、「リアルほんやくこんにゃく」ができてしまったら、言語のコミュニケーションの壁がなくなり、英語をしゃべれることに価値がなくなってしまうのではないか、という不安も芽生えます。また、これから英語を本格的に学習しようとする人にとっても、これから頑張っても無意味なんじゃないかという思いも出てくるかもしれません。

翻訳技術で乗り越えるのが困難な3つの壁

確かに、翻訳技術はこれからどんどん発達して、将来は旅行や必要最低限の会話をする程度なら、またメールや文書でのやりとりであれば、英語の知識がなくても問題なくできるように発達していきそうです。今はまだGoogle翻訳も、不自然な翻訳になってしまうことも多々ありますが、機械学習を繰り返していけば、「文脈」に応じてより自然な翻訳にすることは可能なように思います。

「文脈」の壁も乗り越えて、翻訳技術が発達していくとすれば、やはり英語学習の必然と、英語が話せることへの価値はなくなってしまうのでしょうか?私自身はAIの専門家ではないので、技術的な側面からの考察はできませんが、語学という側面から考えてみた時、AIの翻訳技術で乗り越えるのが難しいと思われる3つの壁があると思われます。これは、旅行などの必要最低限の会話においてという前提ではなく、「仕事で英語でコミュニケーションをとる場合」という前提で考えています。

1. タイムラグの壁

ひとつはタイムラグ。理想の翻訳マシンの在り方を想像すると、口元に何らかのウェアラブル端末を身につけて、本人が喋ると同時に翻訳された音声がその端末から発せられるようなシステムです。これを考えたときに、「おおよそリアルタイム」は実現できるかもしれませんが、完全にリアルタイムは、英語と日本語の構造上難しいのではないかと思います。

なぜなら、英語と日本語は語順が大きく違うからです。英語は主語や結論が先に来るのが通常であり、日本語は目的語や述語が先に来ることが多いです。例えば、「この会議に必要な資料を私たちにあとでメールしてもらえませんか?」ということを伝えたい時、英語だとおそらく「Could you please send us …」と始まると思います。なので、微妙にタイムラグが生じることになるのです。

必要最低限の意思疎通だけとれれば良い場合はこれで全く問題ないと思います。しかし、日常的に仕事を一緒にする相手とこのように微妙にタイムラグが発生するコミュニケーションをとり続けるのは結構苦痛だと思いませんか。仕事として密にコミュニケーションをとるには、やはり同一言語での会話が必要だと思うんです。

2. 音声化のすることの壁

また、仮に完全にリアルタイムに音声を翻訳してくれる技術ができたとします。しかし、仕事の場で、自分が発言したら、自分の声と英訳された音声の2つが同時に出るって、「ふつうにうるさいし聴き取りづらい!」と思いませんか笑。

音量の調整とかもすごく難しそうですよね。会議の場と、電話と、オフィスのフロアでの会話で、音声もコントロールしないといけません。そう考えると、やはり音声をリアルタイムで翻訳するには大きな壁があると思えてなりません。

3. 「わからない」ことを伝える壁

また、もう一つ、個人的にはこれが一番大きいのではないかなーと思っているのが、「わからない」ことがわからなくなってしまうことです。これはどういうことかと言いますと、相手が使った表現の意味が、直訳だとよくわからなかった場合に、ピンポイントで聞き返すのが難しいということです。

いくら翻訳技術が発達したとしても、言葉はどんどん変化していきますし、新しい言葉も出てきます。自然に訳されないことも常に出てくるでしょう。例えば、「interesting」と相手が言った言葉を、「面白い」と翻訳機が訳したとします。でも文脈的に面白いだと合わないので、「”面白い”ってどういう意味ですか?」と聞き返したいとします。それが英訳されて「What is “interesting”?」とかになればいいのですが、例えば、「What is “fun”?」など、他の言葉に置き換わってしまった場合に、全く会話が成立しなくなってしまいます。

わならない言葉を「ここがわからない」とピンポイントで伝えることも、コミュニケーションの上では非常に重要だと思うんです。

まとめ

翻訳技術は非常にレベルが高くなってきていて、海外旅行等の必要最低限のコミュニケーションであれば、英語を学ぶ必要がなくなりそう。でも、仕事で日常的に外国人とコミュニケーションをとるのであれば、
・タイムラグの壁
・音声化することの壁
・「わからない」ことを伝える壁
を乗り越えることが非常に難しいと思われるため、自ら語学の習得をするのは必要そう。です。

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